特車二課 第二小隊(バブルからの疎外)

アニメ版もコミックス版も、そのドラマの舞台となるのは特車二課だ。そう、あのとっても楽しい特車二課である。あまりにも楽しいので、そのままスッと物語の世界に入れてしまうのだが、しかし、ここで余計な解説を加えてみたいと思う。

 

前回述べたように、この作品の時代背景となっているのは1980年代後半、「バブル経済下の東京」である。

だが、そんなバブル東京下における彼らの姿を見てほしい。まず東京湾埋立地だ。今でこそ商業施設が立並ぶ大観光地となった東京湾埋立地だが、パトレイバーの連載開始当時、そこにはまだ何もなかった。本当に何もなかったのだ。トレンディな「カフェバー」も「ディスコ」も何もなかった。警視庁は、そんな東京湾埋立地に残された廃工場を買い取り、それをそのまま特車二課の事務所としてあてがったのである。劇中における描写からは空調設備すらまともにないことがうかがえる。水虫の後藤隊長にはかなり辛かったのではないだろうか。そう、彼らの待遇は妙に悪いのだ。

また、特車二課(第二小隊)のメンバーの学歴やキャリア的なものに注目すると、一つの共通点が浮かんでくる。公務員、予備校出身、ノンキャリア、本庁からの島流し……。

 

結論から言ってしまえば特車二課 第二小隊は、いわゆる当時の「負け組」だった(いやな表現だが)。今でこそ公務員というのは安定の象徴だが、当時はバブルである。大手民間企業の給与やボーナスの平均額は、公務員のそれを大きく上回っていたし、またそんな好景気下では、お洒落なカタカナ用語をちりばめた業界や職業がイケてるものとされた。したがって、当時の公務員は確かに安定の象徴ではあったものの、同時に刺激の少ない、薄給で、ダサい職業と見做されていた訳である。

そんな公務員という存在自体が、文化的にも社会階層的にも下とされていた時代、第二小隊のメンバーがどれほどのコンプレックスを抱えていたかについては想像するに難くない。彼ら、第二小隊の男たちは、バブル下の東京で消費の快楽を貪るトレンディな女子大学生たちの姿を、東京湾埋立地から、怨嗟と羨望の眼差しで日々見つめていたのである。