地球防衛軍(エコ左翼)

いわゆる環境左派(エコ左翼)と呼ばれる人々。その母体となった「マルクス主義」やらやら「新左翼」についてはネットで検索してもらえばいいと思う。何にせよ、この地球防衛軍はそんなかつての新左翼のなれの果てだ。

 

彼らが環境保護運動にコミットしている理由だが、パトレイバーの連載が始まるずっと前、1970年代後半にはそれまで左翼が依拠していたマルクス主義の威信が相当低下してしまっていた。それでも社会改良や革命をあきらめなかった一部の活動家が持ち出したのが「環境保護という思想」である。つまり、資本主義や人間の上位概念として自然(地球)を設定し、その自然保護の立場から社会批判を行うというものだ。たとえば、宮崎駿の「風の谷のナウシカ」は、そんな環境左派の思想をダイレクトに反映している。

 

とはいえ時は1980年代後半、バブル下の東京である。そんな思想を真面目に信じている人などほとんどいない。そのため、このパトレイバーに登場する地球防衛軍も確固とした信念をもっている訳ではない。したがって、彼らのやることは土木作業用レイバーを盗んでは適当に暴れて日常の憂さ晴らしをするだけにとどまってしまう。

 

この作品世界ではレイバー(ロボット)に乗って戦う理由を誰も持っていない。そういう意味で、パトレイバーとは「ロボットもの」 がストレートに成立しない世界の物語である。実際、特車二課の隊員たちは、倒すべき敵を求めてさまよっているように見えなくもない。