AVS-98 イングラム・エコノミー (正義の値段)

以前、パトレイバーの世界には「政治のレイバー」と「経済のレイバー」が存在すると書いたのだが、このイングラム・エコノミーはその片足を「経済のレイバー」に突っ込んでい る。正義が安く買えるなら、その方がよいと言うわけだ。

 

バブル時代という背景もあるのだろう。コミックス版パトレイバーは、今読むと驚くほどに金の話ばかりしているのだが、それは作者が金にがめついという訳ではない。むしろその逆で、作者は金で買えない(はずの)ロマンについて描こうとしており、ゆえに正義に値札をつけようというこの機体を好意的には描写しない。

 

また、この経済効率という観点から見ると、特車二課のイングラムと、企画七課のグリフォンは「同じコインの裏と表」だと言える。彼らはある意味で同じ「金で買えないロマン」を共有しており、ゆえに時々その価値観が一致してしまう。だがそのロマンの追求方法が異なるために、彼らは対立しているのだ。

 

また、このイングラム・エコノミーを「父の力」と解釈する視点からみると、これは興味深い機体でもある。なぜなら、あの篠原遊馬が唯一積極的に乗り込み、そしてグリフォンに瞬殺された機体からだ。廉価版というエクスキューズはあるにせよ、やはり遊馬は父の作ったロボットに乗って戦えないのである。