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カテジナ日記

Vガンダムと富野由悠季作品

廃棄物13号 (後) ~暴走する父の力とイングラム~

パトレイバー

ある問いから始めたいと思う。

・なぜ廃棄物13号は、レイバーの装甲を着込んでいるのか?

・なぜ廃棄物13号と特車二課は13号埋立地で激突するのか?

その結論を先取りしてしまえば「廃棄物13号はもう一つのイングラム」だからではないだろうか。

 

いったんコミックスに戻ろう。イングラムと廃棄物13号のバトルシーンを眺めていると、廃棄物13号がレイバーに見えてこないだろうか?いや、レイバーの装甲を着込んでいるのだから当然かもしれない。しかし、なぜ13号にレイバーの装甲を被せる必要があったのか?シナリオの都合上、イングラムリボルバーカノンから身を守る必要があるからか?しかし、そもそも13号への火器の使用は制限されていたはずではなかったか?

 

この疑問に回答するために、ここで一つの仮説を立ててみたい。「作者は廃棄物13号を、一種のレイバー、すなわち暴走したイングラムとして描こうとしたのではいだろうか?」。そう考えると、イングラムと廃棄物13号の間に、いくつかの「共通点」が見えてくる。

・「父の力」である。イングラムの父は篠原一馬、廃棄物13号のそれはニシワキ・セルを発見した西脇順一

・「国家」を経由している。イングラムは警視庁に配備され、廃棄物13号は米軍の生物兵器として開発された

・「女性」によって育てられる。イングラムは泉野明、廃棄物13号は西脇冴子によって

 上述の共通点を整理すると、廃棄物13号のエピソードは次のように理解できるだろう。廃棄物13号とは「暴走した父の力」だ。それは父、西脇順一の力であると同時に、国家、すなわち米軍と企業組織(東都生物工学研究所)によって奪われ、ブーストされ、そしてねじ曲げられた力でもある。父の娘、西脇冴子は父の力を奪い返し、世に解き放つために廃棄物13号に(母としての)歪な愛情を注ぐ。だがそれゆえに廃棄物13号には「父の倫理」が宿ることがない。そこにあるのは「父の力」だけだ。

 

この廃棄物13号と激突し、それを打ち倒すのは特車二課 第二小隊のイングラムである。だが、しかし、イングラムもまた13号と同じ「暴走した父の力」なのではないだろうか。その暴走が押しとどめられているのは、それが髪を切った西脇冴子、すなわち泉野明と熊耳武雄(職業倫理を優先した女性たち)によってコントロールされているからではないのか。

 

こう考えると、廃棄物13号の死がグロテスクに描写された理由が分かる気がする。なぜなら、それはもう一つのイングラムの死であり、泉野明への警告だからだ。