Vガンダム 15話「スペースダスト」

過去のガンダム・シリーズには「三国志」に登場するような英雄、すなわち己の力量一つで乱世を渡るカリスマたちが数多く登場してきた。シャアはもちろんシロッコハマーンマ・クベだってそうだろう。彼らの言動はファンを喜ばせ、ガンダムを痛快な娯楽作品にしてきた

だが、このVガンダムにこうしたカリスマは登場しない。その代わりに存在するのは自分の人生すらコントロールできない、ちっぽけな、だが等身大の大人たちだ。

たとえばシャア的な存在としてウッソのライバルとなることが期待されたクロノクル・アシャー。実際の彼は企業の新入社員程度の存在でしかない。序盤の中ボス、ファラ・グリフォンは初登場の時点で失敗を繰り返しており焦っていて余裕が無かったが、この15話ではとうとうリストラされてしまう。ウッソと戦う以前の問題だろう。そしてゴッド・ワルド。本来ならばランバ・ラル的ポジションにいるべきはずの男だが、いきなり敗残兵として登場し、なんとウッソに施しを受けてしまう。男の権威の失墜もここに極まれりである。

このようにVガンダムでは、少年が次々と表れる強大な敵を倒しながら、ステップアップしていくという物語が成立しない。そもそも「立ちはだかる敵がいない」のだ。おそらくはこの現実世界と同じように。