Vガンダム 27話「宇宙を走る閃光」

シュラク隊のリーダー、ジュンコ・ジュンコがその短い生涯を終える。シュラク隊のメンバーは仕事にのめり込み過ぎて短命だ。ウッソに言わせると「生き急いでいる」。何故ここまで焦るのか。実は彼女たちは今日でいうところの「負け犬」的存在だといえないだろうか。

シュラク隊は当初から連邦軍に対して散々文句を言っていた。連邦の軍人は頼りない。しかしそれにも関わらず、高級将校はみな男なのだ。彼女たちの不満はここにあるのだろう。仕事に打ち込み有能であるにも関わらず、彼女たちはある一定以上に出世していないし、評価されてもいない。所詮軍は男社会であり、彼女たちはその壁にぶつかっているのだ。

失望した彼女たちはそこで初めて自分のプライベートに目を向けたのだろう。だが、そこには「何も無かった」。自分の社会的役割(軍人)に疑問を持ったときには、個(女)としての役割も失いかけていたのだ。だから彼女たちはオリファー程度の男でも、必死になって奪い合うし、競ってウッソの母親代わりになろうとする。しかし残念なことにオリファーもウッソも一人しかいないし、他の男は年寄りばかりだ。結局、彼女らは前以上に仕事に逃避することになる。もう戦争にしか自分のアイデンティティを託すものが無いのだ。

Vガン放送前夜、80年代の雇用機会均等法の施行とバブル期の大量雇用によって女性の社会進出は一気に進んだ。しかし当時キャリアウーマンともてはやされた彼女たちの一部は90年代不況の中で、余裕を失った男社会の壁にぶつかり挫折した。恋愛や結婚をキャリアとトレードオフしたにも関わらずだ。シュラク隊とはVガン放送時に富野が目にした「負け犬予備軍」がモデルだったのかもしれない。

この27話において、どうしても目が行ってしまうのが、ウッソが放つ大量破壊兵器「ビッグキャノン」の形状だ。どう見ても「男性器」の形をしている。これはウッソの射精(精通)を表現している。彼も大人になろうとしてるのだ。だが、それはカテジナによって阻止されてしまうのだ。先回りして言ってしまえば、これがVガンダムのテーマであり、のちにエヴァンゲリオンを生むのである。