Vガンダム 37話「逆襲ツインラッド」

鯨の屍骸に怯えるマルチナとエリシャに対してシャクティがその電波な身体論を炸裂させる。これはVガンダムのテーマの一つを簡潔に説明するものだと思う。彼女は「人間は美しく生きることが出来ない」と語っているのだ。これはマルチナやエリシャに向けて、と言うよりも、カテジナをはじめとする「ピュア」に生きたくて仕方のないマリア主義者たちに対して投げかけられた台詞である。

ドゥカー・イクは相変わらず「地上をバイク乗りの楽園にしたい」という「訳の分からない」理由でリガ・ミリティアに戦いを挑んでくるのだが、この「噛み合わなさ」はVガンのドラマ性を下げていると思う。「話しても無駄だよ!」というオデロの台詞に集約されるように、イクにしろ、クロノクルにしろ誠実なのは分かるのだが、マリア主義者の多くはどうみても何かが根本的にズレていて、会話が成り立ちそうな相手じゃない。

だが、この「ドラマ性の無い戦争」はある意味でリアルなのかもしれない。90年代以降、幾つかのカルト教団や、所謂「おかしな人たち」が様々な事件を引き起こしてきたが、多くの場合において彼らの主張は意味不明であり、人々を脱力させると同時に不気味がらせてきた。このような「理解出来ない隣人たちの暴発」に対する不安感と、Vガンダムにおける「理解できない他者との戦争」はよく似ているように思う。