カテジナ日記

Vガンダムと富野由悠季作品

Vガンダム 45話 幻覚に踊るウッソ

ジャミトフ・ハイマンは連邦制度の引き締めと、ジオンの残党狩りを目的にティターンズを設立。右傾化する社会を憂いたブレックスは、ティターンズに対抗するために、左翼過激派組織エゥーゴを結成。そのエゥーゴの台頭を恐れたバスクティターンズを極右武闘派組織へと作り変えていった。そして彼らは互いに暴走、グリプス戦役へと突入してゆく…。彼らが根っからの悪党だった、という訳ではないだろう。むしろその逆だ。悪人だから右になる訳じゃないし、左になる訳でもない。彼らは、ただ、「よりよい社会を創り上げなくては」と、焦って行動しただけなのだ。


「…何かしよう、何かしなきゃ。その焦りが事態をここまで悪化させたとは思わないか…?」。これは「機動警察パトレイバー2 the Movie押井守)」における後藤隊長の弁だ。また、このP2に強く影響を与えた「逆襲のシャア」のエンディングテーマ Beyond The Time(TM NETWORK)の歌詞は富野監督本人が手を入れたと言われているが、そこにはこうある。「…夢という風に導かれて、過ちの船に揺られてゆく…」。この夢とはもちろん社会変革(ニュータイプ)のことだ。ちなみに、あの悪名高いナチスも、その支持母体は「青年たちに職を与え、ちゃんと社会参加させよう」と主張していた左翼政治団体だった。


このVガンダムでは、変革への意欲あふれるカテジナ&クロノクルのコンビより、全体的に消極的で、いまいちヤル気のないウッソの方が肯定的に描かれている。この45話における女王マリアの祈りも「変革など夢見るから、その業がますます深くなる」「人々は穏やかな日常へ帰ってそこで成長しろ」というメッセージに他ならない。だが、これは一歩間違えば単なる現状肯定にしかならない。しかもマリアの祈りに闘争本能を封じられたウッソは、現実を生きるどころか、幻覚の中で危うく死にかけてしまう。その時ウッソを救ったのは、(闘争本能溢れる)オデロが広げた光の翼と、シャクティが歌う「ひなげしの歌」だ。「…若者たちは 夢の翼を広げて ひなげしの花を 散らしながら 旅立っていく…」。逆シャアからVガン時代の富野は現状肯定と社会変革願望の間で激しく揺れていたのだろう。この少年に、いや人類に「夢の翼」で旅立つことは必要なのか?と。