Vガンダム 10話「鮮烈!シュラク隊」

シュラク隊の存在はガンダム・シリーズにおける男の地位低下を意味している。ウッソの周りには、憧れや反発の対象となる「大人の男」がほどんど存在しない。その代わりに存在するのはウッソを際限なく甘やかしてしまう「母親気取りの女戦士」だけだ。

もちろんオリファー・イノエは大人の男である。だがこの10話を見ても分かるように、彼はシュラク隊やマーベット(女性たち)の機嫌を取るのに必死だ。しかも彼は初登場の時点から、ガンダムの運用をウッソに任せきっている。ウッソはそんな彼に憧れるはずもなく、同情すらしている。オリファーは最初から「乗り越えられてしまった存在」なのだ。

おそらくオリファーは現実世界における等身大の大人の男の姿なのだろう。父が子に携帯電話やパソコンの使い方を教えてもらうというのはありがちだし、部下の女性におっかなびっくり話しかける上司の姿も今や見慣れた光景だろう。

これはファースト・ガンダムランバ・ラルあたりが好きな人にとっては不快で苦痛な展開なのかもしれないが「男らしさ」という幻想が失われてしまった時代に生きる我々がしっかりと見据えるべきなのはこのオリファー・イノエの方だと思う。