太田功(暴走する正義の男)

繊細な(?)「サンデー男子」の感性とは相いれない、ジャンプ・マガジン的感性の持ち主として描かれる太田功。彼の存在意義のその半分は、遊馬や野明を引き立てることである。つまり考える遊馬や感じる野明に対して、考えないし感じない「脳筋男」というものだ。そして作者 ゆうきまさみの考える、躊躇せず正義の力を執行できる男、の象徴でもある。時々、急に内省的になって、野明や遊馬のドラマに絡んでくるのだが、暫くするとまたコメディリリーフ的な役割に戻ってしまう。

この彼の存在はパトレイバーという作品のテーマを浮かび上がらせるのではないだろうか。それは太田のようではない、人並みに繊細な人間は、どのようにすれば正義を執行できるのか、であり、また太田の正義はどのように担保されるのか、だ。

後者の疑問については作者がすぐに答えを提示してくれる。それは太田を指揮するのが「熊耳武雄(女性)」だということだ。つまり正義の暴力を振るう男性を女性がコントロールしているのである。この構図は「南雲しのぶ」率いる特車二課 第一小隊にもそのままあてはまってしまう。