内海課長(スキゾ・キッズ)

シャフト・エンタープライズ・ジャパン 企画七課の課長であり、後藤喜一隊長のライバル的存在。

 

ゆうきまさみの前作 「究極超人あ~る」を知らない人には分かりづらいのだが、この内海はその前作に登場する「鳥坂先輩」にそっくりだ。したがってその鳥坂の説明から始めたいが、その詳細についてはwikipediaで調べてもらった方が早いだろう。とりあえず、その彼を一言で説明すると「テンションが高くて行動力があるアッパー系のオタク」である。その行動原理は「面白ければなんでもいい(手段のためには目的を選ばない)」であり、次から次へとトラブルを起こし続けるのだが、劇中の登場人物や読者からは愛されており実質的にはほぼ主人公であった。

その鳥坂は高校卒業後に東京都の職員となっている。が、このパトレイバー世界線においては、何の間違いかシャフト・エンタープライズ・ジャパンに入社してしまったらしい。そして、究極超人あ~る時代と同じ「面白主義」で課長にまで出世してしまった。

 

今考えると、こんな男が出世するわけがない、会社に居られるわけがない、そもそも就職できる訳がない、と言われればそうなのだが、繰り返すようにそこは1980年代後半のバブル東京を背景にした作品である。こんな男でも存在出来る程度の余裕が社会にあった……のかもしれない。

実際、この内海のような男が肯定された時期や空間が80年代には存在したのである。「スキゾ・キッズ」という言葉をご存じだろうか。80年代にちょっとしたブームを巻き起こした現代思想家「浅田彰」が提唱した概念で、簡単に言えば子供のような人物のことだ(細かい定義についてはやはりググっていただきたい)。そしてその当時はその「スキゾ・キッズ」とやらが新しい時代を切り開く期待の星だったのである。

 

しかし、このような前作の主人公かつ、80年代の期待の星である鳥坂=内海を、作者は、このパトレイバーという作品においては「敵」として設定することになる。