バドリナート・ハルチャンド(非実在青少年)

バドの特徴は次の要素に集約されるのではないだろうか(というより、これらの組み合わせでしかないと感じられる)。つまり、天才肌・幼児性・中性性・外国人・関西弁だ。

 

天才肌:言うまでもなく、野明の努力と対比させるためだろう。最終的に作者が提示するのは何のかんので(当然ながら) 努力>才能という価値観である。

幼児性:大人になりたい野明との対比だろう。そして同時にバドと内海の共通点でもある。バドを倒すことは内海を倒すこととイコールなのだ。

中性性:野明との対比、あるいは共通点かもしれない。つまり、イングラムには少年のような少女が、グリフォンには少女のような少年が搭乗している。野明の髪が短いのは、おそらく熊耳と同じ、男性的な職業倫理観を優先していることの表れだろう(もっとも殆どの婦警の髪は短いのだが)。一方、バドの髪が長いのは、その逆、つまり、彼の倫理感の欠如を示しているのかもしれない。

関西弁を操る外国人:これはバドの出自をぼかしておきたいためかもしれない。彼の出自が容易に想像できる場合、特に日本人や東南アジア系だと、ストーリーが彼の身元捜しに移ってしまうだろう。また、その生々しさのために内海たち企画七課が本当の極悪人に見えてしまい、特車二課のライバルとしてはバランスが悪くなる可能性がある。

ただ、モハメッド・アドルースのエピソードもそうなのだが、コミックス版パトレイバーには日本人、というよりも東京人が地方出身者や外国人に冷たいという世界観が提示されている(実際、当時は外国人労働者問題がそれなりに深刻であった)。そのため、バドが有色人種の外国人であることは、日本人に利用される可哀想な外国人としての側面を持つだろう。

 

以上のようなポイントを押さえて行くと、バドというのは、どこまでも野明のライバルとして設計されているように思える。だがその結果、どこか非現実的というか、他の登場人物とはリアリティのレベルが異なってしまっているようにも感じられる。実際、劇中で黒崎はこの彼を犬や猫と同じレベルで語ってしまうし、作者自身も犬に例えてしまっている。