Vガンダム 17話「帝国の女王」

総集編であると同時にザンスカールの正体が明かされる17話。 Vガンダムの放送当時、敵が国家や軍隊ではなくカルト教団であることに対して「リアルではない」という批判があったらしい。だがその2年後に本当に「某カルト教団」が毒ガスを散布してしまうのだから、結果としてVガンダムはこれ以上ないくらいにリアルな話だったと言える。

しかし、なぜ宇宙世紀0153年(放送当時は1990年代)にもなって「カルト」なのか、と言えば、恐らく「正しい生き方」というものを提示してくれるからだろう。例えば戦間期なら男は戦場へゆき、女は子供を生んで家庭を守ってさえいればそれで間違いがなかった。戦後においても、男は企業戦士に女は専業主婦に、子供は学歴貴族を目指して受験勉強してさえいれば幸せになれた(はずだった)。80年代なら「おいしい生活」だったんじゃないだろうか。

だが90年代、バブル崩壊以後、こうした価値観は全く通用しなくなってしまった。景気が悪ければ「おいしい生活」が指し示すような、小市民的日常に埋没し続けることも難しくなる。そんな時代に、こうしてさえいれば正しく生きていけると教えてくれる宗教はいろいろと魅力的なのだろう。ここで「保守」と「リベラル」のような分かりやすい政治的対立があれば、カテジナもそちらへ走ったのかもしれないが、連邦制が崩壊しつつある時代ではエゥーゴ的な政治運動がもはや成立しなかったのだ。