Vガンダム 18話「宇宙艦隊戦」

父の消息を尋ねるため、ウッソはリガ・ミリティアのリーダー、ジン・ジャハナムに会いに行く。だがこの(偽)ジン・ジャハナムは等身大を通り越して、あまりにも卑小な男だった。ウッソは彼の人間性に失望し苛立つ。マーベットがこの苛立ちをなだめてくれなければ、ウッソは暴発していたはずだ。

この作品には母親代わりになろうとする女性たちが沢山登場する。シュラク隊もそんな母親たちの仲間だ。逆にカテジナの場合、彼女の苛立ちを受け止めてくれる父性を持った男に出会っていないし、実際、そんな男はこの作品は登場しない。彼女がイライラしっぱなしなのはおそらくこのせいだろう。これは「逆襲のシャア」におけるクェス・パラヤと全く同じでもある。このように「不足気味の父性と、過剰な母性」というのがVガンダムの物語全体の印象だ。

もうひとつ個人的に面白いのが、オデロとウォレンの恋だ。よくある男の子向け作品では、少年がロボットに乗って悪と戦い社会的自己実現を果たすと、何故か同時に恋愛パートナーをゲット出来てしまう。しかしこの時点でのオデロやウォレンは、モビルスーツパイロットとして戦っていない。何の取柄もない彼らは、女の子に対して積極的に話しかけたり、プレゼントと送ったりと、極めて平凡かつ普通にアプローチせざるを得ない。こうした普通の恋愛模様はアニメやマンガの中では意外と見ることが難しい。実際のところ、正面きって好きな女の子にアプローチするというのは、めちゃくちゃ難しい。特にアニメやマンガが好きなオクテな男の子にとっては、普通に女の子に話しかけるより、ロボットに乗って活躍することの方がハードルが低く見えてしまうものなのだ。多くの男の子向け作品で戦うこと=社会的自己実現=恋愛になってしまっているのはこのせいだろう。