Vガンダム 21話「戦略衛星を叩け」

派手なモビルスーツ戦、死力を尽くして戦う兵士たち。比較的力が入った作画と演出で、ロボットアニメらしい爽快感と、戦記物的な悲壮感が漂う。

しかし、観ていて何故か釈然としない。考えてみると双方ともに何のために戦って、死んでゆかねばならないのか、よく分からないのだ。もし、ここでザンスカールの兵士たちが「打倒地球連邦!」と叫べば、Vガンダムは一気に分かりやすくなると思う(地球連邦は最初から崩壊しているのだが)。

だが彼らが戦う理由は、土地やお金のためでも国家のためでもない。「マリア主義」を宇宙に広めて「女王マリアの母の愛で世界を包むこと」なのだ。だから、いくら彼らが真剣に戦っていても何処か滑稽に見えてしまう。男らしくてカッコいいジオン軍の将校が「ジオンの大儀」を掲げて死んでいくのとは違う。

そしてまるで予言のように、この作品の放送2年後に某カルト教団がテロ事件を起こしたのだが、そのときの世間の反応も「意味がよく分からない。だが多くの人が確かに死んだ」という戸惑いだった。人々を突然捕らえる、どこまでも無意味な死。Vガンダムの不愉快さ、気持ち悪さはそういうところから来ていると思う。