Vガンダム 28話「大脱走」

「タイヤが空を飛ぶな!」

舞台を宇宙に移してからのVガンダムは「バイク戦艦」の違和感を打ち消すために様々な演出をおこなってきた。だがそれにも限界がある。とうとうこの28話前後から、登場人物がVガンダムの世界観を揶揄するような台詞を言い始めるのだ。数話前における、マーベットの「こうなったらザンスカール本国に侵入して内部から揺さぶりをかけましょう」という台詞も同じである。彼女は「無駄に力強いガッツポーズ」を決めつつ、この「ムチャクチャな作戦」を提案するのだが、視聴者よりも先に、子供たちにその無茶さを突っ込まれてしまう(この作戦のせいでケイトは戦死する)。こうした製作サイドのヤケ気味な悪ノリもVガンの魅力だ。この28話では富野監督自身が登場しているので、気になる人は確認して欲しい。

さて、この28話におけるマーベットは本当に幸せそうだ。パイロットとしての役割をウッソに奪われ、シュラク隊に女としての立場を脅かされ、ずっとイライラしていたマーベットだが、オリファーの本妻という地位を得て、精神的にかなり安定したように見える。負け犬の滑り込みセーフだ。もっともすぐに戦争未亡人になってしまうのだが……。

一方のカテジナは、ザンスカールに馴染もうと必死で努力している。「クロノクルをサポートしたい」という気持ちもあるのだろうが、実家にもリガ・ミリティアにも居場所が無かったカテジナには、もうこれより先に逃げ場が無いのだ。下層階級にも関わらず皆から愛され、自己肯定感に溢れるウッソと、上流階級出身でありながら自意識過剰で周囲に馴染めず、すぐ孤立してしまうカテジナ。この28話においても、ウッソはカテジナが自分を好きだから殺さないのだ、と信じきっている。カテジナには、その素直さが眩しく、また腹立たしいのだ。