Vガンダム 29話「新しいスーツV2」

ガンダムSEEDで悪評高い(?)福田己津央がコンテを切っている29話。特に何か問題がある訳でもない。全てのコンテは富野が修正するらしいのだが、それでもスタッフロールに名前が載るのは「仕事を認めてやり、自尊心を傷つけないように」という配慮かららしい。

内容の方は全編に渡って「テレビまんが」なノリが漂う。Vガンのターゲットが低年齢層だった、ということもあるし、富野が宮崎駿の「未来少年コナン」をライバル視していたためでもある。しかしそうはいっても富野アニメ。ルペ・シノの「恐ろしい拷問」とかマルチナ、エリシャに裸を見られるウッソとか、なんだかよく分からない羞恥プレイなギャグが満載だ。このあたり、硬派なガンダムファンはどう思うのだろう?

ルペ・シノ、いや、Vガンダムに登場する大人の女性たちはウッソをやたらと可愛がる。なぜだろうか?以前も触れたが、キャリアウーマンとして仕事に打ち込んできた彼女たちは、男社会の壁にぶつかっているのだろう。所詮軍隊は男社会、女性はある一定以上評価されないし出世もできない。後に分かるが、パイロットとしては一流のルペ・シノでさえ、ピピニーデン程度の男に媚を売らなければ、組織の中で生きてはいけないのだ。だがキャリアの追求を諦めたからといって、他に何かある訳でもない。彼女たちなら少し頑張れば、男の一人や二人すぐ捕まえられるはずだ。それをやらないのは「大人の男」には、もう「ウンザリ」なのだろう。このVガンにおいて、マトモな男がどれだけ登場しただろうか?だから、彼女たちはその寂しさをウッソにぶつけてしまうのだ。

そしてこのルペ・シノの「恐ろしい拷問」とは、無理やりウッソをお風呂に入れることである。このシーン、観れば分かるが、私の「モノ」になれと言っているに等しい。ウッソはまだ少年だから「自分好みの男」に仕立て上げられる、と彼女は思っているのだ。ウッソがニュータイプと見込んでのことである。当然、ウッソは「自分は普通の子供」である、と主張する。ここでウッソが嫌がっているのは、子供に対して身勝手な希望や欲望を押し付ける女性だ。Vガンダムにはこうした大人の女性たちが多く登場する。30話で登場するウッソの母親もまた、そんな教育ママの一人である。また、これは富野の自己批判といっていいかもしれない。今まで散々、子供やニュータイプに「未来への希望」を押し付けてきたのは、他でもない富野自身だからだ。