Vガンダム 43話「戦場の彗星ファラ」

ムバラク将軍に「世界平和より、家庭の平和を守れよ」と嫌味を言われているウッソの父、ハンゲルグ。しかし今更息子にどう接していいのか分かず、結局いつも突き放した態度でウッソに接してしまう。富野アニメお約束の情けない父親である。

だが、このハンゲルグの存在感はリガ・ミリティア全体にポジティブな影響を与えている。リーンホースの偽ジンジャ・ハナムはハンゲルグへの対抗心からやる気を出しているし、「お姉さん」たちに甘やかされることで、ロクに成長してこなかったウッソが、父の承認を得ようと、ここで初めて主体的に行動し成長しようとする。子供というのは己の存在を無条件で全肯定し包み込んでくれる母性だけではなく、否定して突き放す厳しい父性が存在しなければ成長することが出来ないのだろう。

宇宙漂流の刑に処されたはずのファラは、その刑を下した張本人であるタシロに救助されていたらしい。タシロはファラの首を切って見せることで保身を図り、その上で彼女を自分直属の部下としたのだ。だがそのタシロ自身、後にズガンとの権力闘争に敗れてギロチンにかけられそうになる。地下に潜ったタシロを恐れたカガチは、ズガン牽制のためもあって彼を再利用する。ファラはそのタシロの非公式な部下なのだ。もう本当に訳が分からない(笑)。「偉いさんのやることは鬱陶しい」というファラの気持ちはよく分かる。そして彼女はもうこんな複雑でややこしい汚れた世間のことなんてどうでもいいのだ。男さえいれば。キースはその犠牲になってしまう。

ウッソがこのファラ・グリフォンの情念に飲み込まれそうになったときに、彼を助けにきたのは、あのハンゲルグだ。父の存在に励まされたウッソは、あのカサレリアのマチス・ワーカー(父親)の戦法でファラを撃退することに成功する。父性がその存在感を示すという、Vガン中でも珍しいエピソードだ。