Vガンダム 13話「ジブラルタル空域」

ディスコミュニケーションが元となり、誰にとっても状況が悪化するとうという、富野的作劇法の基本が見て取れる。

リガ・ミリティアは、政治的に中立なPCST(宇宙引越し公社)に対して事前連絡なしでの協力を要請する。余裕がなかったとはいえ、ゴリ押しが過ぎるだろう。

ザンスカールも、リガ・ミリティアとPCSTが結託していると勝手に確信しており、彼らの弁明に耳を貸そうとしない。

PCSTはPCSTで、頑なに政治的中立を守ればすべてが丸く治るはずだと、リガ・ミリティアザンスカール双方の要求を拒み続ける。この中立への志向は公平さよりも自己保身に基づいているのだが、恐らく当人たちにも自覚はないだろう。

こうした誤解と判断ミスのスパイラルが、予想もしていなければ望んでもいなかった、最悪の状況を生んでしまう。だが、それに翻弄されるのも彼ら自身なのだ。

コミュニケーションの困難さを扱った作品としてはエヴァンゲリオン庵野秀明)が有名だが、あの作品の登場人物はコミュニケーションの困難さをそれでもきちんと認識している。それに比べると、富野作品における登場人物はディスコミュニケーションに気づいていないか、そもそもコミュニケーションの必要性すら感じていないことが多く、正直かなりタチが悪い。個人的にどちらがリアルでシビアかといえば後者である。コミュニケーションの必要性と困難さを互いに認識している時点で、コミュニケーションの半分が成立しているからだ。