ゴジラ-1.0と戦後民主主義(あるいは誰も死なない戦争)

過去のゴジラシリーズが意識的ないし無意識的に向きあってきた戦争、あるいは国家と個の関係を(おそらくは意識的に)棚上げしている作品だった。 内容的には、町内会の有志(自警団)がゴジラを退治するような話である。 舞台は終戦直後の混乱期、GHQ統治下…

ジャニーズの件

「タレントの活動の場を奪わないように」 「ファンの気持ちを考えて」 みたいな言説がよく理解できない。 所属タレントにしろファンにしろ、むしろ道義的責任を感じてもいいくらいでは…。

すずめの戸締り(新海誠)

先日、「すずめの戸締り(新海誠)」を観てきたのだけど、いやあ、これ元ネタは村上春樹の「カエルくん東京を救う」だよねえ。

かがみの孤城(母と子の孤独)

先日「かがみの弧城(原作:辻村深月、監督:原恵一)」というアニメ映画を観てきた。 ああ、中学校ってこんな感じだったな。今でもこうなんだろうな。そういえば、私は「保健委員」だった。保健室に行くと、いつも生徒が何人かいたな。あれも保健室登校みた…

”失われた未来”を求めて ―シュタインズ・ゲート―

子供時代の夏休みに「なにか」を失ったにもかかわらず、それが何なのか、思い出せない。しかし、その喪失感だけは胸の奥に刻み込まれている……。アニメ「シュタインズ・ゲート」はそんな気分にさせてくれる作品です。その理由を探ってみよう、自分自身に説明…

Vガンダム「カテジナ・ルース」

富野作品においては、少年を成長させるのが父性であり、退行させるのが母性です。この両者のせめぎ合いこそが、ガンダムシ・リーズの中心的なモチーフだと言ってもよいでしょう。 しかしながら、このVガンダムという作品においては、母性が父性を圧倒してお…

Vガンダム 51話「天使たちの昇天」

カテジナは不甲斐ない男に苛立ってきたし、母性を持った女を憎んできた。強かったはずの男の弱体化と、それを許す女の甘さが、ルース家の家庭崩壊を招き、ひいては宇宙戦国時代という社会の混乱を呼び込んだと信じたのだ。 大人は少年を戦場に送り込み、その…

Vガンダム「クロノクル・アシャー」

クロノクルは素直で真面目、その上に努力家だ。持ち前の優等生的器用さで、何でもそつなくこなしてしまう。だが社会が混乱すると、その煽りを真っ先に受けるのが、こういった優等生タイプではないだろうか。バラバラの指示が飛んできたり、対立する複数の価…

Vガンダム 50話「憎しみが呼ぶ対決」

「クロノクルは私に優しかったんだ!」 家庭、故郷、リガ・ミリティア。何処にも居場所のないカテジナにとって、ザンスカールとクロノクルだけが「巣」であり、それさえ手に入れられれば彼女は何処にいたってよかったのだ。しかし、その場所すらシャクティと…

Vガンダム 49話「天使の輪の上で」

タシロはカガチに反旗を翻すという、野心家らしい行動には出るものの、軍事力はファラに頼っているし、戦後の統治は女王マリアに任せるという。視聴者は「じゃあ、お前自身は一体何をやるんだ」と突っ込みたくなる。そのくせ彼は女達に対して支配的に振舞っ…

Vガンダム 48話「消える命 咲く命」

「いつの間にか戦争に染まりきっているよな」「僕は嫌なんです。人殺しをしているところで大人になるなんて」 劇中のこうした台詞は、過去のガンダム・シリーズ、特にファーストガンダムの否定に近い。戦場という「非日常」で大人になってしまったアムロが、…

Vガンダム 47話「女たちの戦場」

ギロチンを押し付けられたファラにしろ、ルペ・シノにしろ、彼女たちは愛した男を殺すことしか知らない。そんな「女」たちを、ここで「母」になりつつあるマーベットが撃退する。マーベットがファラを打ち破ったのは、子供を手に入れたマーベットの方が、男…

Vガンダム 46話「タシロ反乱」

シャクティは、男たちを叱責し、また、銃を撃つことまでするのだが、これと同じ光景をガンダムファンは数年後にも見ることになる。そう、∀ガンダムに登場するキエルもまた、ディアナに代わってムーンレィスの男達を叱責し、ギンガナムの刀を奪って彼に切りか…

Vガンダム 45話「幻覚に踊るウッソ」

ジャミトフ・ハイマンは連邦制度の引き締めとジオンの残党狩りを目的にティターンズを設立。右傾化する社会を憂いたブレックスは左翼過激派、エゥーゴを結成。エゥーゴの台頭を恐れたバスクはティターンズを極右武闘派組織へと作り変えていった。こうして彼…

Vガンダム 44話「愛は光の果てに」

個人的な話だが、小学生の頃に「風の谷のナウシカ」を観て非常に感動したことがある。「ナウシカは心のキレイないい子だなぁ」なんて思ったものだ。ところが最近この作品を見直したところ「オウムより、ナウシカの方が暴走しているのでは」「こんな学級委員…

Vガンダム 43話「戦場の彗星ファラ」

ムバラク将軍に「世界平和より、家庭の平和を守れよ」と嫌味を言われているウッソの父、ハンゲルグ。しかし今更息子にどう接していいのか分かず、結局いつも突き放した態度でウッソに接してしまう。富野アニメお約束の情けない父親である。 だが、このハンゲ…

Vガンダム 42話「鮮血は光の渦に」

椅子を尻で磨くだけの男、ピピニーデンの死に様がネタにされる42話。 殺すことでウッソを取り込み、母になろうとしたルペ・シノが正気であったかどうかは分からない。人生に疲れた彼女は「少年のイノセンス」に触れることで救済されたかったのかもしれない。…

Vガンダム 41話「父の作った戦場」

タイトル通り「火消しが火を付けて回っている」エピソード。ウッソの父、「戦争マニア」のハンゲルグ・エヴィンが登場する。のちに分かるがこのハンゲルグ、ザンスカール戦争の勝利を確信した直後に息子を見捨てて戦場から逃走、次なる敵を倒すために木星へ…

Vガンダム 40話「超高空攻撃の下」

アムロやカミーユならホワイトベースやアーガマの空気にどっぷり漬かり切っているところだ。だが、ウッソはリーンホースの仲間からいったん距離をとり、故郷のカサレリアに帰る。過去の主人公たちが故郷を飛び出してそれっきりだったのとは随分違う。彼は自…

Vガンダム 39話「光の翼の歌」

ウッソたちの前に「立派な大人の男」(?)が立ちはだかる三十九話。敵を撃墜することをためらうウッソと、全く躊躇しようとしないマチス大尉のコントラストが印象的だ。迷いを見せている間のウッソは弱く、迷わないマチスは強さを見せるのだが…。 何もかも…

Vガンダム 38話「北海を炎にそめて」

マルチナとデートするために、オデロは彼女を戦場に連れ出してしまう。彼の行動は軽率で危なっかしい。戦闘においても彼は勇み足気味で、イク少佐とレンダの命を無駄に奪ってしまう。オデロを駆り立てているのは「男らしさ」へのこだわりだ。確かにこれは男…

Vガンダム 37話「逆襲ツインラッド」

鯨の屍骸に怯えるマルチナとエリシャに対してシャクティがその電波な身体論を炸裂させる。これはVガンダムのテーマの一つを簡潔に説明するものだと思う。彼女は「人間は美しく生きることが出来ない」と語っているのだ。これはマルチナやエリシャに向けて、と…

Vガンダム 36話「母よ大地に帰れ」

ミューラ・ミゲルはウッソを手放す覚悟を決めたらしいが、ウッソの方はまだ母親に拘っている。そんなウッソを無理矢理母親から引き離すべく、富野はこの36話でとうとうミューラ・ミゲルを殺害してしまう。「キエル嬢のスカートの中に頭を突っ込みたい(母性…

Vガンダム 35話「母かシャクティか」

過去のガンダム・シリーズの主人公ならとっくに親離れしている頃だが、ウッソは母の存在に拘泥する。しかし実母かシャクティかの二択を迫られ、シャクティを選択する。 穿った見方をすれば、シャクティはミューラからウッソをまんまと奪い取った、と言えなく…

Vガンダム 34話「巨大ローラー作戦」

一年戦争は建前として「弱者」が生き残るための反乱だった。だが、このVガンダムに登場するクロノクルとカテジナは「お坊ちゃん」と「お嬢さん」である。二人とも貧しさとは無縁であり、生き残るために戦う必要は無い。彼/彼女が戦う理由は、世界の過ちを直…

Vガンダム 33話「海に住む人々」

「世界が変わってゆくところを見たい」。この33話におけるカテジナの台詞だ。かつてのガンダム・シリーズの主人公たちの想いでもあるだろう。だが、よく考えてみればウーウィッグ特別区に住むプチブルジョアだったカテジナにはこんな台詞を吐くための切実な…

Vガンダム 32話「ドッゴーラ激進」

「あんなマシンで本気なんだ!?」ウッソが驚くのも当然で、この32話に搭乗するMAドッゴーラは日本昔話に出てくる「竜の子太郎」のパロディだ。バイク戦艦と同じか、それ以上のトンデモメカで思わず脱力してしまうが、脚本、作画、演出共に高いレベルでまと…

Vガンダム 31話「モトラッド発進」

戦争に興じる大人たちを片目に、掃除や炊事について語り合うシャクティとスージーが印象的だ。他の戦争(ロボット)アニメを観ていると、人の生が戦場や革命という「非日常」に全て集約されるように錯覚するが、実際は彼女たちが言うように「人が生きていく…

Vガンダム 30話「母のガンダム」

ウッソの母、ミューラ・ミゲルはオカルティックな夢まで根拠にして息子に「ニュータイプ」や「希望」といった、自分自身では手に入れられなかったものを押し付け、英才教育という名の洗脳教育を施した挙句、彼を手放そうともしない。ウッソは彼女の人生の補…

Vガンダム 29話「新しいスーツV2」

ガンダムSEEDで悪評高い(?)福田己津央がコンテを切っている29話。特に何か問題がある訳でもない。全てのコンテは富野が修正するらしいのだが、それでもスタッフロールに名前が載るのは「仕事を認めてやり、自尊心を傷つけないように」という配慮かららし…