Vガンダム 28話「大脱走」

「タイヤが空を飛ぶな!」 舞台を宇宙に移してからのVガンダムは「バイク戦艦」の違和感を打ち消すために様々な演出をおこなってきた。だがそれにも限界がある。とうとうこの28話前後から、登場人物がVガンダムの世界観を揶揄するような台詞を言い始めるのだ…

Vガンダム「カテジナとウッソ」

「あなまたが此処までこなければ、こうはならなかった」 カテジナのこの台詞はメチャクチャを言ってるのだが、彼女からすれば、自分を追い込んだのはウッソなのだ。ウッソは天才パイロットで、リガミリティアのヒーローだ。その素直な性格から誰にでも愛され…

Vガンダム 27話「宇宙を走る閃光」

シュラク隊のリーダー、ジュンコ・ジュンコがその短い生涯を終える。シュラク隊のメンバーは仕事にのめり込み過ぎて短命だ。ウッソに言わせると「生き急いでいる」。何故ここまで焦るのか。実は彼女たちは今日でいうところの「負け犬」的存在だといえないだ…

Vガンダム 26話「マリアとウッソ」

女王マリアを人質にとってザンスカールからの脱出を図ったウッソだが、クロノクルに強引に阻まれてしまう。このクロノクルの、実姉の身の安全を無視したように見える行動には少々驚かされる。実弟としての個人的立場よりも、軍人としての立場を優先したのだ…

Vガンダム 25話「敵艦と敵地へ」

「大尉は変わろうと必死なんだ」 カテジナの台詞のとおり、この25話では、今までどことなく頼りないおぼっちゃん風だったクロノクルが「大人の男」に成長するために努力する姿が描かれる。ウッソと異なり、クロノクルとカテジナは努力と成長の価値を素直に信…

Vガンダム 24話「首都攻防」

上昇志向をむき出しにするカテジナは、クロノクルに「野心」の有無を問う。彼女はクロノクルの「器の大きさ」を測り始めている。彼女は捕まえた男のグレードで自分の価値が決まると思っているのだろう。一応、今のポジションでも女王マリアの弟の女なのだか…

Vガンダム 23話「ザンスカール潜入」

ウッソたちはザンスカール本国に潜入するのだが、この間、視聴者は戦争の動向が分からない。ガンダムを「戦記物」として観ている視聴者は戸惑うと思う。物語のどこにピントが合っているのかよく分からないからだ。 過去のガンダム・シリーズは「連邦 VS ジオ…

Vガンダム 22話「宇宙の虎」

ここに到っても、ウッソの戦う動機は「シャクティを探すこと」だ。マーベットとジュンコは、軍人としての自覚が希薄なウッソを叱るのだが、最終的には彼を許してしまう。Vガンダムにおける女性たちは、自分自身でも自覚しているのだが、ウッソに甘い。 その…

Vガンダム 21話「戦略衛星を叩け」

派手なモビルスーツ戦、死力を尽くして戦う兵士たち。比較的力が入った作画と演出で、ロボットアニメらしい爽快感と、戦記物的な悲壮感が漂う。 しかし、観ていて何故か釈然としない。考えてみると双方ともに何のために戦って、死んでゆかねばならないのか、…

偽史同士の抗争を描いたガンダムF91

「ガンダムF91」について、簡単にまとめておきたい。結論を先に書いてしまうと、これはは「偽史同士の抗争」を描いた作品だ。この構図は、これ以降の富野作品の基底をなすことになる。富野作品をVガンダム前後、つまり黒だの白だので分けるのは少し違うと思…

Vガンダム 20話「決戦前夜」

カイラスギリーの艦内で女王マリアの娘として扱われているシャクティを目にしたカテジナは、彼女の存在に苛立ちを覚える。 カテジナにしてみれば、クロノクルにしがみつくことで、やっとたどり着いたザンスカールという「ステージ」に、シャクティがその運と…

Vガンダム 19話「シャクティを探せ」

オデロ・ヘンリークは自他共に認める子供たちの兄貴分だ。この19話において彼はザンスカールの偵察部隊に対して勇敢にも戦いを挑む。「女を守るのが男の役目だろ!」。だがその戦い不要なものだった。しかもパイロットではないオデロは満足に戦うことも出来…

Vガンダム 18話「宇宙艦隊戦」

父の消息を尋ねるため、ウッソはリガ・ミリティアのリーダー、ジン・ジャハナムに会いに行く。だがこの(偽)ジン・ジャハナムは等身大を通り越して、あまりにも卑小な男だった。ウッソは彼の人間性に失望し苛立つ。マーベットがこの苛立ちをなだめてくれな…

Vガンダム 17話「帝国の女王」

総集編であると同時にザンスカールの正体が明かされる17話。 Vガンダムの放送当時、敵が国家や軍隊ではなくカルト教団であることに対して「リアルではない」という批判があったらしい。だがその2年後に本当に「某カルト教団」が毒ガスを散布してしまうのだか…

Vガンダム 16話「リーンホース浮上」

「主義者というのは、いつの時代も…」 16話に登場するザンスカールの将兵たちは比較的まともな大人だ。そんな彼らに、マーベットは「レジスタンスの抵抗運動に子供を利用するリガ・ミリティアは狂っている」と突っ込まれる。彼女は「ギロチンを止めさせるた…

Vガンダム「ファラ・グリフォン」

初登場時からファラ・グリフォンはレジスタンス運動や基地建設の遅延に悩まされていた。それなのにクロノクルという「上司の身内の新人研修」を押し付けられてしまう。特別待遇のクロノクルは他の部下からも嫌われおり、持て余すファラは「さっさと帰れ」と…

Vガンダム 15話「スペースダスト」

過去のガンダム・シリーズには「三国志」に登場するような英雄、すなわち己の力量一つで乱世を渡るカリスマたちが数多く登場してきた。シャアはもちろんシロッコやハマーン、マ・クベだってそうだろう。彼らの言動はファンを喜ばせ、ガンダムを痛快な娯楽作…

Vガンダム 14話「ジブラルタル攻防」

ビルドゥングス・ロマン(教養小説)の欠片も無い14話。ウッソは、宇宙に出ようとするカテジナを引き止めるようとするがそれが不可能だと知ると、今度は「自分も一緒に行く」と言い出す。以前からウッソの恋愛感情を鬱陶しがっていたカテジナは、食い下がる…

Vガンダム 13話「ジブラルタル空域」

ディスコミュニケーションが元となり、誰にとっても状況が悪化するとうという、富野的作劇法の基本が見て取れる。 リガ・ミリティアは、政治的に中立なPCST(宇宙引越し公社)に対して事前連絡なしでの協力を要請する。余裕がなかったとはいえ、ゴリ押しが過…

Vガンダム 12話「ギロチンを粉砕せよ」

富野作品には「擬似家族」というモチーフがよく登場する。そこでは常に家族への失望と、その代替としての擬似家族に向けた期待が語られる。親元を離れたアムロ・レイがホワイトベースの仲間たちへと向かっていったことを思い出して欲しい。(この家族から擬…

Vガンダム 11話「シュラク隊の防壁」

11話にみられる腐敗した地球連邦、ウッソとオデロの喧嘩、その喧嘩を見守るシュラク隊というのは「機能不全の男性社会で争う男たちを見守る、母性を持った女たち」という富野作品に共通のモチーフと綺麗に重ならないだろうか。 こうした「女たちに見守られな…

ゆうきまさみは何に挑んだか(顔のない父)

この作品「機動警察パトレイバー」において、作者「ゆうきまさみ」は何を描こうとしたのでしょうか。いや、何に挑んでいたのでしょうか。敵は企画七課、すなわち80年代的感性だけであったのか? それを読み解く鍵は遊馬とその「父」一馬にあります。イングラ…

イングラムは赤ちゃんロボット(泉野明はお母さん)

「お母さん頑張るからね」 これは1巻において泉野明が、イングラムのセットアップを行うときの台詞だ。ここで作者は、物語のテーマを設定している。そう、イングラムは「父の力」であると同時に、よちよち歩きの「赤ちゃんロボット」だったのだ。 この観点か…

篠原遊馬の挫折(そして久世駿平へ)

泉野明が理想の大人として、後藤、杉浦先生、父親といった「学校の先生」タイプを提示するのに対して、遊馬は実父である篠原一馬はもちろん、「誰も尊敬できない」と言う。彼にとっての大人のロールモデルは存在しないのだ。 そしてこれが遊馬の物語の結末で…

泉野明はRight Staffだったのか?(パトレイバーの正義)

この物語の結末は泉野明のイングラムが、バドのグリフォンを倒すというものだ。その意味は、特車二課 第二小隊が企画七課を倒したということに留まらず、部下を育てる後藤喜一に、誰も育てなかった内海が敗れたということでもある。 そしてこの結果、特車二…

バドリナート・ハルチャンド(非実在青少年)

バドの特徴は次の要素に集約されるのではないだろうか(というより、これらの組み合わせでしかないと感じられる)。つまり、天才肌・幼児性・中性性・外国人・関西弁だ。 天才肌:言うまでもなく、野明の努力と対比させるためだろう。最終的に作者が提示する…

パトレイバーの世界観

パトレイバーの世界観について、改めて触れたいと思う。それは近未来であるとか、レイバーが実用化されているとかそういうことではない。もっと観念的な世界観だ。この作品世界は4つの象限に分けられる。 1) 汚い大人の世界(篠原一馬、藤倉、徳永、平光)2…

黒崎(企画七課のゴルゴ13)

黒崎はハイスペックな男だ。知能犯罪、暴力、レイバーの操縦までなんでもござれだ。ワンカットだが、黒崎の背中がゴルゴ13のように傷だらけであることが確認できる。もしグリフォンに搭乗していたなら、泉のイングラムすら破っていただろう。ただし火器を利…

廃棄物13号(後)(もう一つのイングラム)

イングラムと廃棄物13号のバトルシーンを眺めていると、廃棄物13号がレイバーに見えてこないだろうか?レイバーの装甲を着込んでいるのだから当然かもしれない。 しかし、なぜ13号にレイバーの装甲を被せる必要があったのか?シナリオの都合上、イングラムの…

廃棄物13号 (前) (特撮の伝統)

そこに含まれるある種の文明批評、アメリカの影……この廃棄物13号のエピソードは特撮映画の伝統を正しく引き継いでいる。 パトレイバー連載当時は「ロボットもの」というカテゴリ自体が衰退していたのだが、それはこの特撮映画も同じであった。かわりに当時の…