カテジナ日記

Vガンダムと富野由悠季作品

パトレイバー

ゆうきまさみは何に挑んだか ~顔のない父~

この作品 機動警察パトレイバーにおいて、作者のゆうきまさみは何を描こうとしたのでしょうか。いや、何に挑んでいたのでしょうか。敵は企画七課、すなわち80年代的感性だけであったのか? それを読み解く鍵は遊馬とその「父」一馬にあります。イングラムの…

イングラムは赤ちゃんロボット ~パイロットはお母さん~

「お母さん頑張るからね」これは1巻において泉野明が、イングラムのセットアップを行うときの台詞だ。ここで作者は、物語のテーマを設定している。そう、イングラムは「父の力」であると同時に、よちよち歩きの「赤ちゃんロボット」だったのだ。この視点から…

篠原遊馬の挫折 ~そして久世駿平へ~

泉野明が理想の大人として、後藤、杉浦先生、父親といった「学校の先生」タイプを提示するのに対して、遊馬は実父である篠原一馬はもちろん、「誰も尊敬できない」と言う。そう、彼にとっての大人のロールモデルは存在しないのだ。そしてこれが遊馬の物語の…

泉野明はRight Stuffだったのか? ~パトレイバーの正義~

この物語の結末は泉野明のイングラムが、バドのグリフォンを倒すというものだ。その意味は、特車二課 第二小隊が企画七課を倒したということに留まらず、部下を育てる後藤喜一に、誰も育てなかった内海が敗れたということでもある。そしてその結果、特車二課…

バドリナート・ハルチャンド ~非実在青少年~

バドの特徴は次の要素に集約されるのではないだろうか(というより、これらの組み合わせでしかないと感じられる)。つまり、天才肌/幼児性/中性性/外国人/関西弁だ。 天才肌―言うまでもなく、野明の努力と対比させるため。最終的に作者が提示するのは何…

パトレイバーの世界観

パトレイバーの世界観について、改めて触れたいと思う。それは近未来であるとか、レイバーが実用化されているとかそういうことではない。もっと観念的な世界観だ。この作品世界は4つの象限に分けられる。 1) 汚い大人の世界(篠原一馬、藤倉、徳永、平光) …

黒崎 ~企画七課のゴルゴ13~

内海に心酔しているようだが、その理由はなんとなく分かる。黒崎はハイスペックな男だ。知能犯罪、暴力、レイバーの操縦までなんでもござれだ(ワンカットだが、黒崎の背中がゴルゴ13のように傷だらけであることが確認できる)。もしグリフォンに搭乗してい…

廃棄物13号 (後) ~暴走する父の力とイングラム~

ある問いから始めたいと思う。 ・なぜ廃棄物13号は、レイバーの装甲を着込んでいるのか? ・なぜ廃棄物13号と特車二課は13号埋立地で激突するのか? その結論を先取りしてしまえば「廃棄物13号はもう一つのイングラム」だからではないだろうか。 いったんコ…

廃棄物13号 (前) ~特撮の伝統~

そこに含まれるある種の文明批評、アメリカの影。。。この廃棄物13号のエピソードは怪獣 ー特撮ー 映画の伝統を正しく引き継いでいる。 パトレイバー連載当時はロボットものというカテゴリ自体が衰退していたのだが、それはこの特撮映画も同じであった。かわ…

Type-J9 グリフォン ~趣味のレイバー~

政治のレイバーではなく、経済のレイバーでもない、第3のレイバー。つまり「趣味のレイバー」だ。(※悪のレイバーではない) このグリフォンはコストパフォーマンスという概念を度外視して開発されている。将来的にはその基礎技術や、開発スタッフが利益を生…

AVS-98 イングラム・エコノミー ~正義の値段~

その名の通りイングラムの廉価版である。価格はわずかにオリジナルの10分の1だ。 以前、パトレイバーの世界には政治のレイバーと経済のレイバーの2種類が存在すると書いたのだが、このイングラム・エコノミーはその片足を経済のレイバーに突っ込んでい る。…

SSS(シャフト・セキュリティ・システム) ~悪の古典~

パトレイバーが古典的なロボットものであったらと仮定とするならば、このSSSこそ特車二課のライバルに相応しかったのではないだろうか。悪人風な面構え、軍隊に近いコスチューム、暴力に対するためらいのなさ。。。しかし、実際はこのSSSが特車二課のライバ…

イングラム不正入札疑惑 ~父との決別~

以前、遊馬がイングラム=父の力の正当性を疑っているのではないか、と書いたのだが、まさにその憂慮が的中したような事件が起きる。イングラムの不正入札疑惑だ。 この疑惑に対して後藤隊長は、イングラムの出自が多少不確かでもこれまで実績を積んできたか…

ブロッケン ~政治のレイバー~

企画七課が西ドイツ ー当時はまだ東西冷戦下だったー から持ち込んだ正真正銘の軍用レイバー。物語上は、グリフォンのための戦闘データ収集用であった。このわざわざ外国から運んできた軍用レイバー、つまり政治のレイバーに企画七課は環境左派地球防衛軍の…

政治のレイバーと経済のレイバー

パトレイバーの世界には ー基本的にはー 2種類のレイバーしか存在しない。政治のレイバーと経済のレイバーだ。 特車二課のパトレイバーは前者に属する。その役割は物事を善と悪、味方と敵に切り分け、その正義を執行することだ。イングラムが警視庁に採用さ…

パトレイバーについて語る

最初にも少し書いたのですが、このコミックス版パトレイバー解説(?)はHIGHLAND VIEWさんとのツイッターでの会話から始まっています。そして作品のキーワードについて少しづつ語ることで、作品の輪郭のようなものが浮かび上がってくることを期待して書かれ…

内海課長 ~スキゾ・キッズ~

シャフト・エンタープライズ・ジャパン 企画七課の課長であり、後藤喜一隊長のライバル的存在。 ゆうきまさみの前作 究極超人あ~るを知らない人には分かりづらいが、この内海はその前作に登場する鳥坂先輩にそっくりだ。したがってその鳥坂の説明から始めた…

企画七課 ~光画部~

特車二課のライバル。この企画七課を抱えるシャフト・エンタープライズ・ジャパンは巨大コングロマリットであり、かつ 多国籍企業である。その横文字のなんとなくカッコいい会社名や、その女性の脚をモチーフにしたロゴからも分かるように 、昭和臭を引きず…

地球防衛軍 ~エコ左翼~

いわゆる環境左派 ーエコ左翼ー と呼ばれる人々。その母体となったマルクス主義やら共産主義やら新左翼についてはネットで検索してもらえばいいと思う。この地球防衛軍はそんなかつての新左翼のなれの果てだ。 彼らが環境保護運動にコミットしている理由だが…

榊清太郎 ~職人~

整備班のメンバーとしては、アニメ版ならシバ シゲオが存在感を持つのだが、コミックス版では榊清太郎について語ればよいと思う。父権的な男性が、あまり登場しないパトレイバーにおいては珍しい親分気質の初老の男性である。いつも怒っている印象があるが、…

特車二課 第一小隊 ~女性が率いる部隊~

問題児扱いの第二小隊に比べてると、いわゆる「まとも」な警察官たちであり、また実務においても有能と見做されている。したがって、アニメ版においても、また、今解説しようとしているコミックス版においても特車二課の第一小隊と第二小隊は、その性格が全…

後藤喜一 ~学校の先生~

コミックス版においては、よく指摘されるように学校の先生的 ーというより文化部の顧問的ー 立場として振舞うことが多い。彼のやっていることの半分(以上)は、部隊内の人間関係の調整と、モチベーションの管理である。熱血指導もしなければ、先頭に立って…

香貫花・クランシー ~女・太田功~

アニメ版からの逆輸入のような形で、コミックス版の後半に登場した。 作者のゆうきまさみは、この香貫花の取り扱いに困ったという。その理由は何となく分かる。なぜならアニメ版における香貫花は、言ってみれば女性版 太田功だからだ。 もし彼女をアニメ版の…

熊耳武緒 ~パイロットのパイロット~

泉野明がロボットに乗る少女なら、この熊耳はロボットに乗る男性 ー太田功ー を操作する女性だ。その意味では男性たちを率いる第一小隊の隊長 ー南雲しのぶー と同じカテゴリに収まる。 また、彼女自身が自己申告してしまうのだが、ドラマのポジション的には…

山崎ひろみ ~元祖草食系男子~

いわゆる草食系男子の走りだったのかもしれない。この彼もまたイングラムに搭乗することはない。ストーリー上はその大きすぎる体格のためにレイバー乗りには向いていないような事を言われていたが、そうではないだろう。 レイバーに乗って戦うには彼は優しい…

進士幹泰 ~家庭人~

彼の一番の特徴は第二小隊で唯一の妻帯者であること。そしてそれを太田功にいじられ続けていることである。しかし太田の態度には、恋愛や結婚に対する屈折した憧れが含まれている気がしなくもないし、それは作者にとっても同様ではなかったか。 変人の多い(…

太田功 ~暴走する正義の男~

(繊細な?)サンデー男子の感性とは相いれない、ジャンプ・マガジン的感性の持ち主として描かれる太田功。彼の存在意義のその半分は、遊馬や野明を引き立てることである。つまり考える遊馬や感じる野明に対して、考えないし感じない脳筋男というものだ。そ…

AV-98 イングラム ~父の力~

リアリティーの問題を離れた場合でも、篠原遊馬はイングラムに搭乗することができない ーまたはしないー。なぜか。それは遊馬がイングラム=父の力を否定しているからだ。 ロボットものならずとも青少年向け作品なら避けて通れないテーマの一つが、父との関…

篠原遊馬 ~ロボットに乗れない男の子~

イングラムを開発、製造した篠原重工の御曹司。そのキャラクター設定はコミックスやOVAなどで多少の揺れ幅を持つが、基本的には以下に集約される。 ・父親と仲が悪い・兄を亡くしている・メカやパソコンといった技術全般に強い・斜に構えたひねくれ者・泉野…

泉野明 ~少年少女~

泉野明というのは実質的に少年として描かれていると言っていいと思う。体育会系でレイバーオタク。。。劇中の描写を見ても、wikipediaのまとめを見てもそうである。 そんな少年のような少女が持つのは、特車二課 第二小隊の男たちにはない元気 ー太田功を除…

パトレイバーの労働者たち ~3K労働~

レイバー乗りについて考えてみたい。 劇中におけるレイバーの扱いというのは、早い話が高性能の重機である(二足歩行が本当に重機として有効かは知らないが)。したがって、物語初期、というか物語全般において一般的なレイバー犯罪を犯すのは、いわゆる建設…

特車二課 第二小隊 ~バブルからの疎外~

アニメ版もコミックス版も、そのドラマの舞台となるのは特車二課だ。そう、あのとっても楽しい特車二課である。あまりにも楽しいので、そのままスッと物語の世界に入れてしまうのだが、しかし、ここで余計な解説を加えてみたいと思う。 前回述べたように、こ…

パトレイバーの時代背景

ここではHIGHLAND VIEWさんとのTwitter上での会話を元ネタに、コミックス版パトレイバーについて、ぽつぽつと書いていきたいと思います。 『機動警察パトレイバー』を中心とした、ゆうきまさみに関するはてしない物語(ツイート群) - Togetterまとめ 押井守…